WEEK神山|新しい「いつも」に出逢う

宿のオープンデータ【2025年1月~3月】

2025/06/22

こんには。
2025年のオープンデータがはじまりました。
【過去のデータ】
宿のオープンデータで見る2024年
宿のオープンデータ12月分とこの1年の総括 (2023年)

今年度からは、赤石さんも加わってもらい、これまでよりも宿泊施設らしい分析も取り入れました。
四半期に1回を目標に公開していく予定です。

今回は1月~3月の3ヶ月間を集計し、記事を書いています。
2025年のはじまりはどんな宿の動きがあったでしょうか。
是非ご覧ください。

集計項目はこちらです。
①泊数(1泊/2泊/3泊以上/5泊以上)
②滞在目的(観光/仕事/視察・イベント)
③年齢(60代以上/50代/40代/30代/20代/中高生/小学生/未就学児)
⑤1グループの人数と構成
⑥エリア(北海道・東北地方/関東地方/中部地方/関西地方/四国地方/九州・沖縄地方/海外)
⑧売上比率(宿泊:飲食)
⑨つながり
⑩宿で出るゴミの量
予約経路
予約のタイミング
稼働率(全体と部屋タイプごと)

2025年1月~3月の2泊以上の連泊率は35%、月毎でも、3ヶ月連続30%を越えていました。
昨年2024年の同じ期間は連泊率25%で、月によって割合にムラがありました。
連泊滞在されるお客さまが増えた要因として考えられることとして、宿では昨年の11月から、毎週月火曜日の休館日を廃止し、月に2日のメンテナンス休館へと切り替えました。
休館日を少なくしたことで、これまでより少し長い期間、滞在中の拠点として利用してもらいやすくなっているのではないかと思います。
オープンデータをはじめた2023年も連泊割合は高く1~3月40%だったのですが、宿をよく利用してくださっているリピーターさんの連泊滞在やここを宿泊場所にした数日間のイベント等が主な内訳だったのに対して、今年は体感として、はじめて来てくださる方々の連泊滞在も目立っているように思います。

(赤石)連泊ゲストの内訳としては少しビジネス需要に偏り、神山町という少し市内から離れる立地上、予定が組めなかったり、事が進まなかったりということで連泊せざるを得ないということもあるのかなと見受けられました。休館日を無くしたことで全ての曜日を予約開放し、今までの宿からのイメージ転換、また休館日を意識しなくてよくなったため、予約検討していただいてるゲストのストレス減につながったり、実際に日曜日から月曜日をまたいでの連泊も数件発生していました。反して、昨年比較では連泊数値が上がっているものの、そこに比例して全体稼働も上がっているため、連泊意向があっても予約が取れないということもありました。エリア特性を見極めつつ、連泊の需要に応じて予約タイミングの開放日の変化というのも考えていきます。


傾向として、3月になると観光利用をされる方が半数を超えます。出かけやすい気候になり、1,2名の少人数で個人旅行される方が多くなります。
実際に宿に来てくださるお客さまと話していても、桜の開花に時期を合わせて旅行に来ましたという方や、お遍路の道中の方がたくさんおられます。

また、今年の1、2月は国内外からの仕事や視察での団体滞在、宿で取り組んでいる風景プロジェクトの合宿、ことばの遠足、町内で開催されていた滞在を伴うワークショップなどが連続していました。

(赤石)まず上記グラフは滞在目的の比率を表していますが、稼働で見ると1月と2月は閑散期認識、3月は繁忙期という認識で、実際の数値も1月2月に比べて3月の稼働は約1.5倍というのを前提として伝えておきます。順番に見てみると、まずビジネス需要は3カ月を通して、大きなブレはなく、一定数ご利用いただいてました。1月は全体稼働が低い中でも、シーズンに左右されないビジネスの減少はあまりなく、視察項目もビジネス同様でシーズンに左右されることはあまりないため、一定数の予約が発生、プラスアルファで県からのインバウンド誘致など団体も数件発生していました。続いて観光項目ですが、ここは数値の上下が激しく、他エリアや他ホテル同様に3月が多くなる傾向。桜シーズンで観光客増、さらにインバウンドも重なったり、歩きやすい気候に伴うお遍路さんも増え、全体の底上げに繋がっている傾向でした。課題感は明らかで1月と2月の滞在をどう過ごしたり楽しんでいただくか。徳島県から離れれば離れるほど、雪のイメージが強くなるように感じ、予約検討の方からの事前問い合わせが何度もありました。が、実際は、特段大雪という訳ではなく、大半は全国的な寒波に比例しているという感じです。神山町に入ってくる人が大幅に減少するシーズン、長期連泊での提案が必要に感じています。

 

1月は30代・40代がボリュームゾーン、2、3月は20代、30代がボリュームゾーンでした。
また、3月は60代も倍増し、インバウンドを中心に観光滞在される高齢の方も多くなった印象です。
2024年と比較すると20代が10%程度減少している一方、30代が10%程度増加していますが、その要因はあまり仮説が浮かんでいません。

(赤石)昨年比較としましては20代と30代の数値変化が目立ちます。30代の増加要因としては神山まるごと高専視察ゲストが要因のひとつかなと捉えています。注目度が高まり、高専側としてもまとめて集客し対応する視察ツアーを開催。頻度も増えている中で、参加者は企業の中間層30代が多い印象です。そこから派生して、再度の来館という個別の視察のにも繋がっています。反して20代の減少は宿としても気になる点ではありますが、神山に特化した動きではありません。まず20代の内訳として、ほぼ観光に振れてきますが、この世代の動きは同じエリアへのリピートは格段低いというのが現状です。神山を選ぶ20代の母数がそもそもが少ない中で、少しずつ落ち着いてきているのかなと予想。20代の旅の傾向は、神山町のみではなく、大きな範囲で四国や徳島を転々と2泊や3泊以上でまわり、移動が多い分、大半を車内で過ごすという旅ながらも、立地柄も影響し、この旅の仕方を選ぶゲストが多いです。純粋に同じ町に連泊というよりも、ひとつの旅という大枠で見て、神山町を発着点にしてもらったり、初日に泊まって何日か後に戻ってきてもらったりと、続いた連泊ではなく、一回の旅での複数回宿泊、リピートしてもらえるような提案が20代のゲストに対しては現実的な提案と感じます。上記にも触れている通り、コロナ時期から見てインバウンドの戻りは明らかで年齢幅の広がりも見えます。お遍路さんも増加傾向なため、お遍路宿というカテゴリーではないもののツアー会社連携や受け入れ態勢の強化を行っています。

 


8人以上になると宿貸切だったり、1日の宿泊者・室数の半数以上を占めるご一行の場合が多いです。何をもって団体とするのかは曖昧ですが、大きなグループのお客さまの割合はざっくり1~2割くらいという目安なのかなと思います。

(赤石)人数が異なると宿泊理由も変わってくるので、データでも多様な用途として捉えられ、構成としては良いかなという認識です。ですが、宿泊に繋がらなかった問い合わせで、行政依頼の視察やお遍路バスツアー等20名以上や30名以上の需要もあり、最大収容19名のWEEKとしては断らざるを得ない状況でした。10名以下の小団体はもちろん宿泊可能で実績もあり、ただその次の10名から19名の人数団体が意外に少なく、飛んで20名以上の団体問い合わせになることが少なくありません。町に入ってくる団体の需要層、人数に対して、町の宿の規模なのか数なのか事業間の連携なのか、今後の受け入れ方への変化は必要に感じました。



四国や関西圏からのお客さまが微減し、関東の割合が少し増えています。
インバウンドについては依然15%くらい。1月は韓国や台湾を中心にアジアのお客さまが多いのに対し、2月はインバウンド0、3月は欧米圏からのお客さまが入り地域が一気に多様化するのがおもしろいなと思います。
また、今年の2月に航空便の徳島ー韓国路線が就航しました。韓国でも神山は地方創生の先進事例として取り上げられていたりと注目されていることもあるので、アクセスがよくなり、韓国から来られる方の数など変化が起きているのかも気になっています。

(赤石)全体の中で多数を占めるエリアを見て、関東はビジネス層、関西はビジネス層と観光層のどちらも、中四国は観光層というところです。昨年比較でエリア毎の比率に大きな変化がないのは、新規の動きやルートが広がっていないということなので、ネガティブな要素かもしれません。但し、インバウンド含む、新規需要の獲得は宿単体の動きになると早いスピードで大きな変化が生み出せないため、徳島県内の取り組み、各域DMO連携、多言語整備、LCC誘致の施策にのっかる必要があると考えています。その他、気になる点として、他エリアでは2月や3月、隣県エリアあたりの近いところで学生の卒業旅行が頻発するが、神山町では、そのような動きがほとんど見られず。近いエリアで動きが多い20代前半男女やグループを仮想顧客のひとつとして個人的に設定し、3名や6名の大部屋をフックにしながらメディア発信し、収容人数増を狙っていきたいです。
インバウンドに着目して見てみると、まずインスタグラムやフェイスブックでの問い合わせからの予約も積極的に吸い上げるようにしました。既に何件か予約成立しましたが、HP含め、多言語化の必要性は改めて感じさせられています。インバウンドの内訳としては大半の利用者がお遍路のように見受けられます。コロナ後から見ると増加傾向ではあるが、1人や2人で行動することが多いため、一緒に動くグループ人数の増加拡大を狙って、現在、旅行会社と連携をとっているところです。また、町全体に宿泊以外の外国人滞在イメージの根付きも少なく見えるため、事業者側の外国人労働者なのか、IT関連などの外国人ワーカーなのか、根本のところがそもそも必要なのかもしれません。

2025

リピート率 繋がり 合計
1月 12% 47% 60%
2月 11% 36% 47%
3月 6% 8% 14%

2024

リピート率 繋がり 合計
1月 10% 64% 74%
2月 12% 21% 34%
3月 7% 30% 36%

昨年と比較して宿泊数は増加している中でもこちらのパーセンテージも大きく下がることはなく、リピートしてくださる方の存在や、新しく縁がうまれ関係性が広がっていっていることを感じます。

(赤石)上記に触れているように、稼働や宿泊人数が上がっている中でも、リピートや繋がりのゲストが一定数存在していてくれることに対して率直にありがたいというところと、繋がりの中で予約成立するということは宿泊事業にとって立派な販路であることを証明している数値であります。また、比率の低下は新規の増加でもあります、昨年10月から始めている新規層へのアプローチは後述でまとめて書いてますので、ご覧ください。

 

売上比率(宿泊:飲食) 7:3

(赤石)宿泊売り上げの天井はある程度決まっているので、変化する数値としては飲食の方になってくると思います。飲食比率が高くなるということは、喫食率も上がり、売上も上がるので宿としては嬉しいことですが、一方でせっかくの神山町滞在なので町に出て回遊してほしいという思いもあるので、上記のような数値がバランスいいのかなと考えています。

ゴミの数

可燃ゴミ リサイクルプラ ビン ペットボトル
1月 7(11) 6(4) 2(1) 2(3) 1(1)
2月 6(8) 3(4) 1(1) 4(5) 1(2)
3月 12(9) 5(5) 2(0) 4(2) 3(3)

※()は昨年の数字
宿全体で稼働を増やしていく中で、どのようにゴミの増加を緩やかにできるかを意識するための数値化している数字です。環境負荷を減らすための工夫は、コンポストや直接仕入れによる梱包ごみの削減、緩衝材や廃材の2回以上の再利用と意識しているのですが、視覚化することで、よりそこへの意識も高くなると思っています。まだ2年目なのですが、今年から比較できるので楽しみです。

全体売上 宿泊売上 飲食売上
1月 115% 114% 122%
2月 112% 95% 179%
3月 156% 141% 239%

昨対で見てみると、1,2月は10%強の伸び率で、ゴミの量もそこまで変化がありません。3月は150%強と大きく伸び、比例して可燃ごみと缶,ビンごみが増えました。ゴミの内訳(体感)としては、可燃ごみは宿泊と飲食で2:1くらい、プラゴミは1:2、缶やペットボトルはだいたい宿泊、逆にビンごみは飲食です。2,3月はイタリアンのポップアップで半分くらいはレストラン営業をしていたので、それに比例してゴミが増えたように思います。
思ったよりも増え方は緩やかだなと思っていますが、宿の環境負荷を減らすという部分で、他に取り組んでいるいきものの活動と連動して、宿の環境負荷に対する取り組みを分かりやすくまとめていきたいです。

この先は今回はじめて数値化してみました。


HPの予約フォームからの予約が6割、その他が1~2割程度ずつでした。
私たちはOTA(ホテル予約サイト)を利用したり、大手旅行会社を経由した販売もしていないので、基本的には全て自社予約です。
数値化してみると、思っていた以上にHP以外の予約経路も多かったです。

(赤石)手数料の発生しない小規模な旅行会社(インバウンドゲスト・アドベンチャーツーリズムゲスト)や個人ツアーガイドとの連携は一部あるものの、ほぼ大半が直接予約で形成されているというところは私の今までの経験上でも全くなく、業界としても目指すべき方向性のひとつと言われています。どういう方にこのデータを見ていただけるか分かりませんが、決して、外部の販路を閉ざしているということでもありませんので、規模問わず、連携の可能性があれば、そこは是非お問い合わせください。お遍路ゲストに特化した個人ツアーガイドも増えてきているので、私も積極的に視野には入れています。じゃらんや楽天などの旅行サイトについても、連携することにより単なる予約増にとどまらず、神山町の認知の部分で大きな後押しになるので、広告塔にもなれる宿泊業という特性を生かして、より良い手段を精査していきたいと思っています。


どの月も大部分は1~2か月前に予約がなされています。
宿泊日の2か月前から予約受付を開始しており、特に繁忙シーズンになるとそれ以前から空室のお問い合わせをいただくことも多いです。

(赤石)宿泊業の言葉でリードタイムというのですが、個人的に初めて見る傾向ばかりでした。まず1カ月前から2カ月前のタイミングで予約をしている方が非常に多く、ビジネスでは神山町への来訪目的がはっきりしてるということや、観光面でもWEEKを目的に選んでいただいてるということが一目で分かります。併せて、データには表してませんが、キャンセルの少なさも驚きでした。本来、リードタイムが長くなればキャンセルも比例して増加するのですが、反してWEEKでの発生は月間でも数件程、早い段階でのスケジュール固定の傾向が見らえます。現状、WEEKの予約開始タイミングは2カ月前ですが、今年はデータを見ながらタイミング拡張を検討しつつ、よりストレスのないやりとりを考えていきたいのと、直近での予約動向がないため、町の中に常に一定数の人の循環を生み出す動きは必要と思いました。

 


曜日ごとの稼働率はどの月も平日は水曜日と週末の金土曜日の稼働が高くなる波型になるのかなと予想していたのですが、実際は今年3月以外は動きが違っていました。また、あまり規則性もないように見え、少し意外でした。
また、2024年について、月・火曜日休館でしたが、団体の貸切予約などの個別の相談があった場合には営業をすることもあったので稼働があります。

(赤石)基本的には金曜日と土曜日の稼働が上がっていくという動きのイメージを持っているのですが、それが全く異なり、それぞれの月で稼働の高い曜日が変わってきています。それだけ需要や用途の多様性が伺えます。個人的に1月と2月の週末の低さが気になるところなので、ホテル単体というよりも町全体で工夫して雪のイメージを弱めていければと思います。

 

   
1番人気の部屋タイプはワークルーム、次はダブルでした。1,2名での滞在に加えて、複数名で来られていても、ひとり1部屋の予約を希望される方も多いです。

(赤石)神山町への滞在層は1名ビジネスやお遍路さんの比率が高いため、ワークやダブルが伸びている傾向です。反して、最大3名のラージルーム、最大6名のグループルームの稼働が低く、まだまだ町全体に複数名以上の宿泊イメージが根付いていない印象と、実際に泊まれる宿も少ないように感じます。町の中へ新たな層の流入を活性化させるためのアプローチと、そもそも宿泊できる環境を整えていくことの重要性が見えるデータと捉えています。

 

まとめ

(赤石)今回よりオープンデータについて分析するようになりましたが、だいたい2年分の蓄積データを見て初めて、そのホテルの特徴をつかむことができるので、現状は表層の数値を見てコメントしています。全ての項目において予想していなかったデータとなっており、いわゆる宿泊業界として多く見られる傾向ではなく、反していう部分もあり、神山町ならではの特有の動きが沢山表れていました。私のデータの見方としては課題感のところにフォーカスすることが多いのですが、同時にローカルエリアの宿泊業の可能性という発信でもあるので、誰かの役に立てればと考えています。

最後に少しだけ紹介ですが、昨年10月より下記サイトの新規掲載や情報整理を一気に行いました。いわゆる外部手数料をかけず、全て自社予約で完結するうえで必要になる要素です。阿波ナビサイト、グーグル、トリップアドバイザー、エキテン、お遍路宿ドットコム、みんなのへんろサイト、お遍路さん家サイト等です。神山町の発信源として、そして宿としての認知や販路拡大を狙った取り組みで、一切販促コストをかけずにできるのが良い点です。

以上、今回は1月と2月の閑散期の分析がメインになりましたが、次回は4月や5月と人が多く動く時期の分析になるので、また違った傾向が見えてくると思います。様々な動きを宿の運営に反映しながら、皆さんのより良い滞在につなげていければ嬉しいです。

(神先)
ゆいなちゃん、赤石さん、オープンデータのまとめと分析、ありがとうございました。ちょうど2022年ごろから宿の体制のベースができはじめ、ようやくチームとして宿の運営が動き出した感じです。できることをがむしゃらにやってきた結果が今で、ホテルとも旅館ともゲストハウスとも表現しにくい変わったの宿になってきて、個人的にもWEEK神山がどんな宿なのか、それを知るための手段としてこのオープンデータをはじめたような気がします。データを広く開いていくことで、客観性も出てくるし、いろんな意見もいただけると思っています。(ぜひご意見ください!)
今回からは赤石さんの視点も加わり、宿業をずっとやられてきた方の分析も専門的で新鮮でした。個人的には宿のキャパ的に、宿泊についてはある程度上限に近づいていて、飲食の伸びしろはあるにせよ、事業全体の拡大は必須のように感じています。というわけで分析は2人に任せ、どんどん宿としての特徴を強化していってもらいたいです。

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